税務調査は何を調べる?税務署の権限と知っておきたい対応方法を解説

「税務署から税務調査の連絡が来たけれど、何を準備すればよいのだろう?」

「税務署から指摘されたら、必ず追加で税金を納めなければならないの?」

税務調査と聞くと、不安を感じる経営者や個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

しかし、税務調査には法律で定められたルールがあります。
税務署には帳簿や取引内容を確認する権限がありますが、何でも自由に調べられるわけではありません。

今回は、国税通則法と国税庁が公表している通達をもとに、
税務調査の基本的な仕組みと対応方法をわかりやすく解説します。

1.税務調査では何を調べられるの?

税務調査は、会社や個人事業主が申告した税金の金額が正しいかどうかを確認するために行われます。

例えば、次のような内容が調査されます。

  • 売上が正しく計上されているか
  • 経費に私的な支出が含まれていないか
  • 外注費について実際に取引があったか
  • 役員給与が適切に処理されているか
  • 消費税の計算が正しいか

このような確認を行うために、税務署の職員には帳簿や請求書などを調べる権限が認められています。
これを「質問検査権」といいます。

法律の根拠:国税通則法第74条の2

帳簿以外の資料も見せる必要がある?

調査対象は、決算書や総勘定元帳だけとは限りません。

例えば、外注費が正しく計上されているか確認するために、
契約書や作業記録、支払明細などの提示を求められることがあります。

国税庁の通達1-5でも、調査に必要な資料は法律上保存義務のある帳簿だけに限定されないとされています。

ただし、調査のために必要であることが前提です。
資料の提出を求められた場合には、何を確認するために必要なのか、
税務署に説明を求めることも大切です。

2.税務調査は突然やって来るの?

税務調査は、原則として事前に連絡があります。
通常は税務署から電話などで連絡があり、調査の日程を相談します。

事前通知では、主に次の事項が伝えられます。

  • いつ、どこで調査するのか
  • 何の税金を調べるのか
  • 何年分を調べるのか
  • どのような帳簿を確認するのか

法律の根拠:国税通則法第74条の9

指定された日に都合が悪い場合は?

会社の繁忙期や重要な取引と重なっている場合などには、
税務署と日程の変更について相談できます。

国税庁の通達5-6では、病気や入院、業務上やむを得ない事情などを、
日程変更の合理的な理由の例として挙げています。

つまり、税務署から指定された日程を、必ずそのまま受け入れる必要があるわけではありません。

ただし、希望すれば必ず変更できるものではないため、
事情を説明して協議することが必要です。

3.連絡なしで税務署が来ることもある?

原則として事前通知が必要ですが、例外もあります。

例えば、事前に調査日程を知らせることで、
帳簿が隠されたり、書き換えられたりするおそれがある場合です。

このような場合には、法律上、事前通知を行わずに調査することが認められています。

法律の根拠:国税通則法第74条の10

現金商売のお店は突然調査されやすい?

飲食店や小売店など、現金を扱う事業者の場合、
突然調査されるのではないかと心配になるかもしれません。

しかし、国税庁の通達5-7では、
現金決済を行っているという理由だけで、事前通知を省略できるわけではない
とされています。

事前通知を省略できるかどうかは、それぞれの具体的な事情によって判断されます。

突然税務職員が訪問した場合には、まず身分証明書を確認し、
調査の目的や対象となる税金・期間について説明を受けましょう。
そのうえで、税理士に連絡することをおすすめします。

4.帳簿や領収書を税務署に持ち帰られることはある?

税務調査では、税務署の職員が帳簿や請求書などを一時的に預かる場合があります。
これを「留置き」といいます。

法律の根拠:国税通則法第74条の7

例えば、取引内容を詳しく確認するため、
帳簿の原本を税務署で預かりたいと求められるケースです。

この場合、国税庁の事務運営指針では、
必要性を説明し、納税者の理解と協力の下で承諾を得ることとされています。

また、原則として預り証が交付されます。

国税庁の通達2-1では、留置きの必要がなくなった場合には、
遅滞なく返還することとしています。

仕事で使用する帳簿を預ける場合には、
どの資料を預けたのか、返還の手続はどうなるのかを確認しておきましょう。

5.税務署から間違いを指摘されたら、必ず修正申告するの?

税務調査によって、申告内容に誤りがあると判断された場合、
税務署から修正申告を勧められることがあります。

しかし、税務署から指摘された内容に、必ずそのまま同意しなければならないわけではありません。

例えば、ある会社の外注費について、
税務署から「実際に業務が行われた証拠が不足している」と指摘されたとします。

その場合には、契約書や作業記録、支払資料などを示し、
取引の実態を説明することが重要です。

税務署にも、調査結果を説明する手続が定められています。

法律の根拠:国税通則法第74条の11

関連通達:6-3、6-4

修正申告と更正処分は何が違う?

修正申告とは、納税者自身が申告内容を修正することです。

一方、更正処分とは、税務署長が税額などを変更する処分のことです。

修正申告を行った場合、その修正申告自体に対して不服申立てをすることはできません。
ただし、法律上の要件を満たせば、更正の請求を行える場合があります。

一方、更正処分を受け、その内容に納得できない場合には、
所定の期間内に不服申立てを行うことができます。

そのため、税務署から修正申告を勧められたときは、
指摘された理由と証拠、税額の計算方法を十分に確認することが大切です。

6.一度税務調査が終われば、もう調査されない?

税務調査が終了しても、同じ期間について再び調査が行われる場合があります。

ただし、実地調査が終了した後の再調査には、
原則として法律上の要件があります。

例えば、調査終了後に取引先の税務調査から新しい資料が見つかり、
過去の申告に誤りがあると認められる場合です。

法律の根拠:国税通則法第74条の11第5項

関連通達:6-7、6-8

国税庁の通達では、再調査の判断に用いられる
「新たに得られた情報」について説明しています。

つまり、一度調査が終われば絶対に再調査されないわけではありませんが、
税務署が無条件に何度でも同じ調査をできるわけでもありません。

7.税務調査の連絡が来たら、まず何をする?

税務署から連絡があった場合には、慌てず、次の点を確認しましょう。

  1. 税務署の担当者と連絡先を確認する
  2. 調査対象となる税金と期間を確認する
  3. 顧問税理士に連絡する
  4. 決算書や申告書、帳簿を準備する
  5. 請求書、領収書、契約書などを整理する

また、税務署からの問い合わせには、
正式な税務調査だけでなく、申告内容について自主的な確認を求める
「行政指導」もあります。

行政指導と税務調査では、修正申告をした場合の加算税の取扱いが
異なることがあります。

そのため、どちらの手続なのかを確認することも重要です。

まとめ|税務調査はルールを知って対応することが大切

税務調査では、税務署に帳簿や取引内容を調べる権限が認められています。

一方で、納税者にも事前通知や調査結果の説明を受けるなど、
法律上の手続的な保護があります。

重要なのは、税務署の指摘を何でも受け入れることでも、
調査を拒否することでもありません。


正しい帳簿と証拠資料を準備し、税務署の指摘内容を確認しながら、
法律に基づいて対応することです。

税務調査の連絡があった場合には、
早めに顧問税理士へ相談し、落ち着いて準備を進めましょう。


参考法令・通達


※本記事は税務調査に関する一般的な解説です。
実際の税務判断は、個別の事情や適用法令によって異なります。

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oshima