資格がなくとも、許認可があれば安定したビジネスはできる
多くの人が「安定した仕事」を考えるとき、まず資格を思い浮かべるでしょう。
税理士、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士など──資格は確かに信頼の証です。
しかし実際には、資格がなくても、許認可さえ取得すれば安定したビジネスを構築できる分野が数多く存在します。

許認可がもたらす「安定」のメカニズム
許認可とは、国や自治体などの行政機関が「一定の条件を満たした事業者」に対して与える営業の許可です。
一見すると面倒に感じるかもしれませんが、じつはこの制度こそが安定の源泉です。
第一に、参入障壁が生まれるという点。
行政の審査や設備要件を満たす必要があるため、誰でもすぐに参入できるわけではありません。
そのため、過剰な競争が起こりにくく、価格の崩壊も防げます。
第二に、公的な信用が得られるという点。
許認可を持つ事業者は、行政により安全性・適法性が確認されているため、顧客や取引先から信頼を得やすくなります。
とくに法人や自治体との取引では、この「許可の有無」が取引の前提条件となることもあります。
第三に、継続的な契約構造をつくりやすいという点。
倉庫業や警備業、廃棄物処理業などは、一度契約を獲得すれば長期にわたり安定した収入が得られる構造になっています。
資格不要でも安定できる代表的な業種
たとえば、古物商やリユース業は、国家資格が不要でありながら公安委員会への届出(古物営業法)だけで運営できます。
ブランド品、貴金属、時計、カメラ、家電など、価値のある「モノ」を扱うことで、在庫自体が担保資産となり、景気に左右されにくい構造です。
また、倉庫業やトランクルーム業は国土交通省の登録を受けることで、保管料による定期収入を確保できます。
人件費は少なく、利用者は長期的に継続する傾向があり、ストック型ビジネスとして安定しています。
産業廃棄物収集運搬業も許可制で、契約単価が明確かつリピート性が高く、景気変動の影響を受けにくい業種のひとつです。
さらに、警備業や旅館業、少額短期保険代理店なども、特定の資格は不要ながら行政の認定を受けることで信用力を確保し、継続的な契約に結びつけています。
許認可による「信頼経済」
ここで重要なのは、許認可が信頼を可視化する装置になっているということです。
つまり、「資格=個人の信頼」、「許認可=事業体の信頼」と言い換えることができます。
行政が定めた基準をクリアしたという事実が、そのまま顧客の安心につながり、営業上の強みになります。
この仕組みは、特に中小企業や個人事業主にとって非常に有効です。
資格を持たなくても、行政の信頼を借りて事業を育てることができるのです。
「許認可戦略」という発想
多くの人は「何の資格を取るか」からキャリアを考えますが、これからの時代は「どんな許認可を取るか」でビジネスを設計する方が現実的です。
たとえば、古物商許可を軸にリユース事業を始め、そこにAI鑑定やオンライン販売を組み合わせる。
倉庫業の許可を取り、個人向けストレージやリース管理サービスを展開する。
こうした組み合わせは、資格よりもはるかに柔軟で、社会の変化にも対応しやすいのです。
まとめ:資格より「許認可」で安定を築く
資格があれば専門的な業務を行えますが、許認可があれば信頼と継続性を確保できる。
そして、多くの許認可ビジネスは一度仕組みをつくれば、固定費を抑えつつ長期的な収入を維持できます。
つまり、安定を求めるなら「資格に頼る」よりも、
許認可を軸にしたビジネスモデルを設計することが、現代の賢い戦略なのです。
著:行政書士大嶋容市事務所
