【相続税対策】“営業権”を活用した親族会社への移転スキームとは

― 中小企業・個人事業のための最新の相続・事業承継対策 ―

相続税対策というと「不動産」「保険」「贈与」などが中心と思われがちですが、実は 中小企業や士業、専門サービス業に最も効果的な方法の一つは“営業権(無形資産)を活用した親族会社への移転” です。

税務調査や申告実務に関わっていると、営業権の扱いを正しく理解している経営者は意外と少ないと感じます。

この記事では、税理士事務所として

「なぜ営業権が相続税対策として重要なのか」

「どのように親族会社へ移転するのか」

「税務上の注意点」

を分かりやすく解説します。

■ 営業権(Goodwill)とは?

営業権とは、事業を行うために必要な「目に見えない価値」のことです。

長年のお客様との信頼

店舗や事務所のブランド力

経営ノウハウ

集客力

継続的利益を生み出す仕組み

これらは、財務諸表には載っていなくても確実に価値がある資産です。

税務上は、適正に評価すれば「無形固定資産(のれん)」として扱われます。

■ なぜ営業権の移転が相続税対策になるのか?

① 将来の利益を“親族側の会社”に移転できる

事業が今後も利益を生む場合、その利益をあらかじめ親族会社に移すことで、

相続時の財産が自然にスリムになります。

② 親族会社側で利益が蓄積しても相続財産ではない

親族会社に溜まった利益(内部留保)は、親の財産ではありません。

つまり相続税の対象外になります。

③ 親族会社は「のれん償却」で強力な節税効果

営業権を取得した親族会社は、その金額を

**5年間で経費化(償却)**できます。

例:営業権2,000万円 → 毎年400万円の経費

→ 法人税が大きく圧縮される

④ 不動産のように調整が難しい資産より“柔軟”

無形資産は評価から契約までスムーズで、不動産のような大きな偏りがありません。

■ 一般的なスキームの流れ

Step1:親族会社を設立

(子・配偶者名義の会社)

Step2:現在の事業の「営業権」を適正に評価

過去数年の利益

事業の収益力

顧客基盤

ブランド価値

Step3:営業権を親族会社へ譲渡(適正価格で)

第三者でも成立する価格を基準にします。

Step4:親族会社が事業を承継し、のれん償却で節税

5年間で費用化 → 税負担が軽くなる

Step5:親族会社に利益が蓄積され、

結果的に親の相続財産が圧縮される

■ 税務上のポイント

営業権の移転は強力ですが、次の点を守る必要があります。

▷ 1. 営業権の評価は合理的に

もっとも重要なのは「適正価格」です。

方法の例:

3年平均利益 × 3〜5年

DCF(将来キャッシュフローの現在価値)

税務署から否認されないよう、根拠が必要です。

▷ 2. 実際に承継する事業の実体があること

親族会社が“名義貸し会社”になってはいけません。

▷ 3. 寄附金認定・役員報酬の過大認定への注意

不当に安い移転価格はNG。

役員報酬も業界水準との差異に注意します。

▷ 4. 国内取引なので移転価格税制の心配は基本不要

親族間でも、国内同士の事業譲渡は移転価格税制の対象外です。

■ どんな事業に向いている?

医療(動物病院・歯科医院など)

美容系サロン

整骨院・整体

飲食業

物販・通販・オンラインビジネス

不動産仲介

コンサル業

「事業を継続すれば利益が出るビジネス」には、基本的に営業権が存在します。

■ まとめ:営業権スキームは“相続×事業承継”を同時に叶える方法

営業権を親族会社へ適正に移転することで、

親側の相続財産を自然に減らす

親族会社に利益を蓄積できる

5年間の法人税節税

事業承継がスムーズ

不動産より柔軟で扱いやすい

という多くのメリットがあります。

相続税対策は「何を残すか」だけでなく、

「どう承継し、どう未来の家族を守るか」が重要です。

営業権を活用した承継スキームは、そのための非常に有効な選択肢となります。