酒税法における「その他の醸造酒」「雑酒」の実務的整理

── 米発酵酒の商品開発を検討する際の制度・税率・免許の考え方【税理士解説】

はじめに(本稿の位置づけと想定読者)

本稿は、以下のような方を主な対象として執筆しています。

米を原料とした酒類の商品開発を検討している事業者の方

既存の清酒製造者が、新たな商品ラインを検討しているケース

クラフト酒・発酵飲料分野への新規参入を検討している事業者の方

酒類の商品開発においては、味やブランド設計だけでなく、酒税法上の品目区分、税率、製造免許、表示規制を前提とした設計が不可欠です。

本稿では、「その他の醸造酒」および実務上いわゆる「雑酒」と呼ばれる酒類について、制度構造を整理したうえで、商品設計上の留意点を解説します。

1. 酒税法における酒類区分の基本構造

酒税法では、酒類は大きく以下の区分体系により整理されています。

醸造酒類

蒸留酒類

混成酒類

このうち、米発酵酒に関連する主な品目は、酒税法第3条において以下のように定義されています。

清酒(第3条第7号)

その他の醸造酒(第3条第8号)

リキュール(第3条第11号)ほか混成酒類各号

重要な点として、

「その他の醸造酒」は酒税法上、明確に定義された一つの品目であり、

一方で「雑酒」という用語は法令上の正式名称ではなく、実務上の便宜的な総称として用いられているに過ぎません。

2. 「その他の醸造酒」と「雑酒(実務用語)」の正確な整理

その他の醸造酒(法定品目)

「その他の醸造酒」とは、

発酵を主体とする酒類であるが

清酒、果実酒等の定義に該当しないもの

として、酒税法第3条第8号に規定された品目です。

制度上は醸造酒類の一品目であり、

税率については後述のとおり、醸造酒類として統一税率が適用されます。

雑酒(実務上の通称)

一方、「雑酒」という表現は、

主要な酒類品目に該当しない

多様な原材料・製法を持つ酒類

を指す実務上の通称として使われることがあります。

税務実務においては、

実際には「リキュール」等の混成酒類のいずれかに該当するか

それ以外の場合には個別判定が必要

という整理がなされます。

そのため、「雑酒」という言葉を使用する場合には、

必ず具体的な法定品目(その他の醸造酒、リキュール等)に落とし込んで検討する必要があります。

3. 税率の整理(令和5年10月以降)

令和5年10月の酒税改正により、醸造酒類の税率は一本化されました。

醸造酒類(清酒・その他の醸造酒 等)

税率:100,000円/キロリットル

これは、清酒・果実酒・その他の醸造酒を含む醸造酒類全体に共通して適用される税率です。

混成酒類(リキュール等)

混成酒類については、

使用する原料用アルコールの量

糖類等の添加物の種類・量

エキス分

などを基に、酒税法上の計算規定に従って税額が算定されます。

実務上は、単純な「○円/kL」とならないケースも多く、

事前に税務署等での確認が不可欠です。

4. 製造免許の区分と実務上の注意点

商品設計と並行して、製造免許の区分確認が極めて重要です。

代表的な免許区分は以下のとおりです。

清酒製造免許(第3条第7号)

その他の醸造酒製造免許(第3条第8号)

リキュール製造免許(第3条第11号)

例えば、

清酒免許のみを保有している場合でも

新たに「その他の醸造酒」や「リキュール」に該当する酒類を製造する場合

には、追加免許が必要となる可能性があります。

5. 表示・説明における誤認リスクへの配慮

商品説明において、

「日本酒風」

「日本酒のような味」

といった表現は、清酒誤認のリスクがあるため注意が必要です。

実務上は、

清酒を直接参照せず、「米由来の発酵酒」という広い文脈で説明する

という整理が適切です。

マッコリを参照軸とする合理性

マッコリは、

米を原料とする発酵酒

清酒とは異なる酒類として一般に認識されている

という点から、清酒誤認を回避しつつ味覚イメージを伝える参照軸として有効です。

6. 米価上昇と商品設計の再検討

近年、米価格は上昇傾向にあり、原材料コストは酒類事業にとって無視できない要素となっています。

このような環境下では、

原材料構成

製造工程

商品コンセプト

を含めた再検討が求められます。

その一環として、「その他の醸造酒」や混成酒類を含む設計を検討することは、制度と原材料環境の双方を踏まえた検討対象として意義があると考えられます。

7. 事前照会・相談の進め方(実務的整理)

実際の検討にあたっては、以下のような段階的アプローチが有効です。

製造予定地を所轄する税務署への事前相談

必要に応じて、国税局鑑定官室への技術的照会

製造方法書・原材料明細・成分想定の事前提出

これにより、後日の区分変更や指導リスクを低減することができます。

8. 相談前に整理しておきたいチェックリスト

原材料(米、副原料の内容)

製造工程(発酵、ろ過、添加の有無)

想定アルコール分・エキス分

想定販売形態(小売、業務用、輸出)

想定する法定品目とその根拠

まとめ

本稿では、酒税法における「その他の醸造酒」および実務上いわゆる「雑酒」について、

法定品目としての位置づけ

税率の整理

製造免許・表示・事前照会の実務

を中心に整理しました。

商品開発の初期段階において制度の全体像を把握することは重要ですが、

実際の設計・申請段階では、酒税に精通した税理士や税務署との綿密な協議が不可欠です。

本稿が、米発酵酒を中心とした商品開発を検討する際の

実務的な検討資料として参考になれば幸いです。