就業規則に「会社の理念」を明記することの重要性

──規則を“守らせる”から“共に実現する”組織へ

企業の成長を支えるのは 社員の力です。そして、社員の力がもっともよく発揮されるのは、会社と社員が同じ方向を向いているときです。

その方向性を示すのが「会社の理念」であり、理念を制度に落とし込むことで、組織全体の一体感が生まれます。

しかし、多くの企業では 理念と就業規則が完全に別物として扱われています。

理念:ホームページに載せている“良い話”

就業規則:コンプライアンスのために“とりあえず作った書類”

このように分離してしまうことで、理念は形骸化し、就業規則は“守るべきルール”で終わってしまいます。

だからこそ、就業規則に理念を明記し、規則の根拠として位置づけることに大きな価値があるのです。

1. 理念を規則の冒頭に書くことで、会社の「価値基準」が共有される

就業規則の第一章に「会社理念」を掲げると、すべてのルールの前提に “何のためにこの規則があるのか” が明確になります。

例:

「誠実な姿勢で顧客に貢献する」

「社員の成長を企業価値と考える」

「安全と健康を最優先とする」

こうした理念を冒頭で示すことで、社員はルールを単なる拘束ではなく、

**理念実現のための“行動基準”**として理解することができます。

2. 理念を規則に反映すると、判断基準が統一される

現場では、ルールでは想定できないケースが必ず発生します。

例えば――

従業員間のトラブル

顧客トラブル

業務上の判断

労働時間の扱い

ハラスメントの線引き

すべてのケースを規定に書ききることは不可能です。

しかし、理念と結びついた就業規則なら “この会社は何を大切にするのか” が明確であり、社員も管理職も迷いにくくなります。

理念:

「相互尊重と健全なコミュニケーションを重視する」

反映規則:

「ハラスメントその他、相手の尊厳を損なう言動を禁止する」

「報告・連絡・相談は事実に基づく誠実性を基本とする」

理念→規則という流れがあるため、規則の正当性が高まり、

社員の納得感も圧倒的に強くなります。

3. 理念を基盤とした規則は「採用・定着」にも効く

就業規則は社内文書であると同時に、今や「採用ツール」でもあります。

理念と規則が一貫している企業は、

応募者から見ても「文化や価値観が明確な組織」に映ります。

どんな人材を求めているのか

どんな働き方を大切にするのか

何を評価され、何が評価されないのか

これらが事前に伝わるため、ミスマッチが減り、離職率も下がります。

また、理念を規則化した企業は、社員がルールに主体的に向き合うため、

**“規則が機能する組織”**に変わっていきます。

4. トラブル防止にもつながる ― 理念は“解釈の指針”になる

労務トラブルの多くは、

「会社の説明が不足している」「社員が解釈を間違えた」

という “認識のズレ” から生まれます。

理念を明記しておけば、

規則の背景にある価値観が共有されるため、社員は誤解しにくくなります。

結果として、

就業規則の運用が安定する

管理職の判断がブレない

労務トラブルの初期消火が容易

第三者(労基署・弁護士等)への説明がしやすい

という大きなメリットがあります。

5. まとめ:理念を就業規則に組み込む企業は強い

理念は「壁に貼られたスローガン」ではなく、

規則・評価・教育に結びついて初めて本当の力を持ちます。

就業規則の冒頭に理念を明記し、

各規程に理念の要素を散りばめることで、

会社全体の価値観に一本の軸が通ります。

これにより企業は――

社員の行動基準が統一され

採用・教育・評価が連動し

トラブルが減り

組織文化が育ち

経営の安定性が増す

という組織としての強さを手にすることができます。

理念を就業規則に反映させることは、

決して形式的な作業ではありません。

それは、企業が自らの文化と将来像を社員と共有し、

共に育てていくための、最も重要なステップなのです。