相続税対策は「贈与×信託×法人」の三位一体で考えるべき理由
相続税対策というと、「暦年贈与でコツコツ移転する」「不動産に組み替えて評価を圧縮する」といった定番の手法が多く語られます。しかし、現代の資産承継においては、制度を横断的に活用した立体的な戦略が求められます。
私は、相続税を単純に節税するのではなく、「家族と資産の未来をどう設計するか」を重視しています。この記事では、私自身の構想をもとに、贈与・信託・法人を組み合わせた総合的な対策の考え方をご紹介します。

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1. 暦年贈与と相続時精算課税のハイブリッド活用
まず基本となるのが、「暦年贈与(年間110万円非課税)」と「相続時精算課税(2,500万円まで非課税)」の使い分けです。評価額が比較的安定している資産については精算課税を使い、時間をかけて移せる資産には暦年贈与を適用します。
特に、教育資金や生活費支援といった名目での贈与は、目的が明確であり、トラブル防止にも役立ちます。
2. 民事信託による柔軟な資産管理と承継
次に活用するのが民事信託です。信託により、資産の「所有(委託者)」「管理(受託者)」「受益(受益者)」を分離することができます。
たとえば、親の自社株や不動産を信託化し、次世代が管理・運用しながら、配当や賃料収入を得るようにすれば、争族防止や認知症リスクにも対応できます。また、教育資金や生活支援も信託条項に組み込むことで、目的に応じた給付設計が可能です。
3. 法人課税信託とグループ内法人への株式移転
ここで重要なのが、「法人課税信託」と「法人への受益権帰属」です。自社株式を信託化し、その受益権をグループ内の法人に持たせることで、評価圧縮と所得分散の両立を図ります。
この法人が受け取った配当等は、グループ内の別法人への出資・増資として再利用し、キャッシュを外部に出さず、組織内で循環させます。これにより、将来のM&A、新規事業、資産防衛にも資金を活かすことができます。
4. 信託終了後の出口戦略も視野に
信託契約には必ず「終了時の財産帰属先」を定めます。これを戦略的に設計すれば、MBO(経営陣による株取得)や自己株式取得による統制強化といった展開も可能になります。まさに、相続対策を起点とした未来の経営戦略です。
まとめ:相続税対策は「未来を設計する手段」
単なる節税ではなく、「どの資産を、誰に、どんな形で承継するか」という視点が大切です。
贈与でコツコツと意思ある移転を
信託で柔軟にコントロールしつつ保全
法人で税務と統制を両立
この3つを掛け合わせることで、自分自身の想いや家族の未来をかたちにする相続対策が実現します。